こんにちは!
今回は橈骨遠位端骨折について解説していきたいと思います!
橈骨遠位端骨折は整形外科疾患の中でもよくみられる疾患で有名です。
学生の時は高齢者四大骨折として、耳に穴が開くほど(すでに開いている)教えこまれました。
ちなみに四大骨折は、
- 上腕骨近位端骨折
- 大腿骨頚部骨折
- 脊椎圧迫骨折
- 橈骨遠位端骨折
はい。
「懐かしい!」という声が聞こえてきそうです。
この橈骨遠位端骨折でリハビリをオーダーされる場合は、
- 保存療法
- 術後療法(観血的整復固定術;ORIF)
- 術後療法(創外固定、またはプラスORIF)
これらのどれかだと思います。
橈骨遠位端骨折では保存療法を選択し、ギプス固定となる割合がほとんどです。
ですが、近年の手術技術の向上により、ORIFの割合がだんだんと増加してきているのが現状です。
これには、掌側ロッキングプレート(volar locking plate;VLP)固定によるものが大きいといわれています。
こういった手術技術について、または橈骨遠位端骨折について、皆さんはどれぐらい理解しているでしょうか?
今回は、橈骨遠位端骨折の手術について、理学療法士が知っておくべき知識を紹介していきます!
目次
橈骨遠位端骨折について
まずは基礎的な知識から説明します!
橈骨遠位端骨折でも、様々な骨折形態に分かれています。
骨折の仕方によって、コーレス骨折やスミス骨折、バートン骨折などなど名称が変わりますね。
簡単に示すと、
- コーレス・・・背側転位
- スミス・・・掌側転位
- バートン・・・関節内骨折
骨折形態では圧倒的にコーレスが多く、そして女性で多い統計結果となっています。
受傷機転は転倒が占め、受傷外力が大きければ関節内骨折の可能性が高くなります。
合併損傷(一緒に損傷してしまうこと)としては、
- 三角線維軟骨複合体(TFCC)損傷
- 舟状月状骨靭帯損傷
- 尺骨茎状突起骨折
その中でも尺骨茎状突起骨折は多くみられます。
さらに合併症(骨折後)としては、
- 手根管症候群
- 変形性手関節症
- 長母指伸筋(EPL)腱皮下断裂
- 屈筋腱皮下断裂
などがあり、少ないながら、遷延治癒や偽関節、コンパートメント症候群や複合性局所疼痛症候群(CRPS)などもわずかに症例報告として存在しています。
これらのことからも、レントゲン所見の確認は必須であり、
手指の痺れや、伸筋腱や屈筋腱の状態や周囲の疼痛には十分に気をつけなくてはいけなくなります。
掌側ロッキングプレート(volar locking plate;VLP)について
現在の橈骨遠位端骨折の手術療法で最も一般的に用いられている手術であり、推奨されているのが、掌側ロッキングプレートによる固定になります。
この手術の利点としては、他の術式より初期固定が良好、早期から手が使用可能なことになります。
ただし、伸筋腱や屈筋腱損傷の合併症の可能性があります。
もし、プレートによって何か症状が起きている場合、抜去なども考えることになります。
伸筋腱損傷は、長母指伸筋腱(EPL)が多く、他にも総指伸筋腱、固有示指伸筋腱断裂なども報告があります。損傷原因としては、スクリューの背側突出が多いといわれます。
屈筋腱では、長母指屈筋腱(FPL)が多く、プレート遠位縁と屈筋腱の接触原因が多いといわれます。
ですが、保存療法の場合でも腱損傷が起こる場合があります。
- 転位骨片
- 仮骨形成
- 浮腫や血腫
- 骨棘
- 血液供給の変化
これらに影響されて、腱損傷、もしくは断裂などが起こることもあり、受傷後数年経過していても症状が発現する人もいます。
実際には、手術の場合でも上記の項目が絡み合うこともあります。
橈骨遠位端骨折のリハビリテーションについて

橈骨遠位端骨折のリハビリテーションは保存療法か術後療法かで大きく変化するが、基本的には自動運動によるリハビリテーションになります。
保存療法ではギプス固定によって、手指や肘関節拘縮などがみられます。これらの拘縮は可動域訓練によって改善可能となります。
術後療法では、早期から患部の運動が可能になり、リハビリテーション実施期間もそこまで掛からないことから、アウトカムを具体的に設定し、患者と共有することが大事です。(これは他も一緒)
アウトカムとしては、可動域や握力などが挙げられます。
Chungらは、患者が健側と比較して、不満足から満足と感じるカットオフ値は、握力が65%、鍵つまみ力が87%、手関節可動域が95%の回復であったと報告しています。(参考文献1)
握力の回復は可動域よりも時間が掛かるとの報告もあるため、握力はこの値になるのだと思われます。
その他にも、ペットボトルの蓋を開けられるかどうかなどのADL上のHOPEをアウトカムとして設定するのも良いかと。
まとめると、
- 握力(またはピンチ力) 健側と比較して60%〜70%程度
- 手関節可動域 健側と比較して90%以上
- ペットボトルの蓋が開けられるなどのADL動作の確保
これらを指標にしてリハビリテーションを進めると良いかと思われます。
自宅でのセルフエクササイズなどは、病院などで行うリハビリテーションと優劣があまりないともいわれ、自宅での運動指導は非常に効果が高いといえます。
また、保存療法や術後療法の違いや合併症などを理解することで、スムーズなリハビリテーションが展開していけるかと思います。
今回はこのへんで。
それでは!
参考文献
-
Chung KC, Haas A. Relationship between patient satisfaction and objective functional outcome after surgical treatment for distal radius fractures. J Hand Ther 2009;22:302-8.
- 橈骨遠位端骨折診療ガイドライン 2017

佐川 修平

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