理学療法士向けに徹底解説!胸郭出口症候群について!

こんにちは!
今回は胸郭出口症候群について解説していきます!

思えば新入社員として病院に就職してすぐに、東京の勉強会に参加したのは胸郭出口症候群のセミナーだったような気がします(間違ってるかも笑)

まぁ、それは置いといて、、、

整形外科で働いている人の中には、胸郭出口症候群(thoracic outlet syndrome;TOS)の診断で実際に介入された方もいると思います。

それでは早速深掘りしていきましょう!

胸郭出口症候群と分類について

胸郭出口症候群の症例は20世紀初頭から報告があり、これまでに、
頚肋症候群、前斜角筋症候群、肋鎖症候群、過外転症候群、第1肋骨症候群など様々な名称で記載されていました。

これを、Peetという人達が1956年に、これらの疾患を統一するとして、胸郭出口症候群という概念を提唱しました。

一般的な胸郭出口症候群は、
胸郭出口部において神経血管束が圧迫や牽引、摩擦刺激によって上肢や肩甲骨周辺に症状が起きる事を指しています。

胸郭出口症候群は次の5つに分類される事があります。

  • 動脈性(arterial TOS)
  • 静脈性(venous TOS)
  • 外傷性神経血管性(traumatic neurovascular)
  • 真の神経性(true neurogenic TOS;TN-TOS)
  • 議論のある神経性(disputed neurogenic TOS;DN-TOS)

このように分類されていますが、静脈性は全症例の約3%、動脈性は約1%ともいわれています。
また、電気診断が陽性のTN-TOSと、陰性のDN-TOSがあり、TN-TOSは100万人に1人とされています。

ちなみに神経性TOSが全体の95%を占めるといわれているため、上記からほとんどがDN-TOSになってしまうことになります。

理学療法も基本的には、神経性TOSに対して適応になります。

さらに神経性TOSは、

  • 圧迫型(18%)
  • 牽引型(8%)
  • 圧迫と牽引の混合型(74%)

に分類できます。

このことから、混合型が多くて、その中でも圧迫型が多いという事がわかります。
ですが、、、

胸郭出口部での圧迫除去を目的に第1肋骨切除術を行なった結果、手術症例群17%程度に不良例が出現し、その不良例の原因の半数以上は腕神経叢の牽引であった

との報告もあります。
これは他の研究でも同じような報告があります。

つまり腕神経叢の牽引が原因の可能性も結構あるよという事です。

胸郭出口の解剖

胸郭出口には3つの生理的な狭窄部位があります。

  • 斜角筋三角(前方を前斜角筋、後方を中斜角筋、下方を第一肋骨にて構成)
  • 肋鎖間隙(上面を鎖骨および鎖骨下筋、下面を第一肋骨にて構成)
  • 小胸筋下間隙(前方の小胸筋、後方の胸壁で構成)

腕神経叢はこれらを通過しますが、正常ならばここでの圧迫は起こりません。
先天性の要因があったとしても、後天的な要因が組み合わさり、症状を引き起こすこともあります。

先天的な要素としては、

  • 中斜角筋停止部の変異
  • 最小斜角筋(前斜角筋の過剰筋束)
  • 頚肋
  • 胸腰上膜の変異
  • 第1肋骨の変異

これらが報告されています。

さらに後天的な要素として、

  • 外傷による腕神経叢の瘢痕や斜角筋の出血・線維化・硬化など
  • 不良姿勢によるマルアライメント
  • 生活習慣による筋バランス不良
  • スポーツなどの反復動作

これらが挙げられます。

腕神経叢牽引型の特徴

  • 広い範囲で症状がある(首・上腕・前腕・手に痺れ)
  • なで肩、鎖骨は水平化あるいは斜め下がり
  • 腕神経叢の圧迫や上肢の下方牽引で症状が増悪
  • 肩甲帯挙上で症状が減弱
  • 血管所見、筋萎縮、反射、知覚消失はみられない

などがあります。

牽引型は神経に沿って、圧痛のポイントが存在しますので、どこが滑走不全で引っ張っている原因なのかを判断する必要があります。
特に圧痛では、斜角筋三角部の頂点で強く痛みが出るといわれます。

牽引型の肩は不安定性が強いなど、並存疾患もあるといわれていますので、しっかりと肩周囲の評価は必要になりそうです。

評価のチェックポイント

レントゲンなどの画像所見も大事だと思いますが、一番重要なのは問診だと思っています。
これは整形外科のどの疾患でも当てはまると思っています。

  • いつから症状が出ているか?
  • どのような時に症状が出るか、または増悪するか?
  • どのような姿勢で楽になるか?
  • 既往歴
  • 仕事や趣味など

なるべく、無駄な質問は避け、なるべく最短で、関連が強い情報を探り出しましょう!

圧痛(Tinel徴候)の確認

  • 斜角筋三角部
  • 鎖骨上窩
  • 肋鎖間隙
  • 小胸筋下間隙

これらのポイントで確認しますが、牽引型の場合は神経に沿って症状が出るので、広い範囲で確認した方が良いです。
また、重力の影響も考慮して座位や立位だけでなく、背臥位でも行うとより情報が得られます。

各種テスト

  • 上位胸椎回旋テスト
    肋鎖間隙部での圧迫刺激を確認のテスト。肩甲帯上部近位を把持して上位胸椎に回旋ストレスを加え、症状の増悪を確認する。
    症状のある側で前方回旋が小さくなる。
  • 肩甲骨下制・挙上テスト
    斜角筋三角部での牽引刺激を確認するため、座位で上方から肩甲帯を押して症状の増悪を確認。また、腋窩から肩甲帯を持ち上げて症状の軽減を確認するテスト
  • 広背筋弛緩テスト
    肩甲骨の高さを変化させず、圧迫して広背筋を弛緩させて、症状の軽減を確認する。
  • Morleyテスト
    鎖骨上窩の斜角筋上部を検査者が圧迫し、症状の増悪を確認する。斜角筋三角部に関するテスト。
  • Adosonテスト
    患側へ回旋、伸展させ、深呼吸をして鎖骨下動脈が圧迫され、手首の橈骨動脈の脈が減弱か消失した場合、陽性判定。
    斜角筋三角部に関するテスト。
  • Edenテスト
    座位で胸を張らせ、両肩を後下方に引かせると、手首橈骨動脈の脈が減弱か消失した場合、陽性判定。
    肋鎖間隙に関するテスト。
  • Wrightテスト
    座位で両肩関節90°外転、90°外旋、肘関節90°屈曲位をとらせると、手首の橈骨動脈の脈が減弱か消失した場合や、血流が悪くなり、白くなれば陽性。
  • Roos3分間テスト
    座位で両肩関節90°外転、90°外旋、肘関節90°屈曲位をとり、3分間手指を曲げ伸ばしし、手指の痺れやだるさが出現し、肢位を保てない場合陽性。

姿勢評価

胸郭出口症候群の症例はもちろん姿勢調節に問題がある事が多いです。

多くみられるSway Backやカイホロードシスなどを取っていれば、肩周囲以外の影響も考えられます。
円背やなで肩がなぜ起こっているかを改善する事で、症状の軽減に繋がることもあります。
また、なで肩はレントゲンでは側面像で第2胸椎椎体が確認できると、なで肩と判断します。

大方これらの姿勢になっている場合は、脊柱の柔軟性低下が起こっているはずなので、詳しく可動域を検査しましょう!

狭窄部位による違い

斜角筋三角部には、他の肋鎖間隙や小胸筋下間隙とは症状が少し変わります。

斜角筋三角部には腕神経叢と鎖骨下動脈が通過し、肩甲上神経、肩甲背神経、長胸神経がここに含まれます。
従って障害を受ければ、これらの神経支配と対応する筋群に症状が出ることになります。

肩甲上神経は棘上筋や棘下筋、
肩甲背神経は大菱形筋、小菱形筋、肩甲挙筋、
長胸神経は前鋸筋をそれぞれ支配されています。

それ以下の肋鎖間隙や小胸筋下間隙では腕神経叢に相当する症状が現れることになるため、症状によってどの部位が障害されているのかをある程度把握する目安になるのではと思います。

肋鎖間隙部では外転・外旋肢位で、
小胸筋下間隙部では肩関節外転・伸展で狭小化します。

アプローチ

主には、筋柔軟性の改善や滑走性改善が主なアプローチになります。
徒手的、または運動療法などを用いて行います。徒手療法のみだとやはり効果が薄い印象があります。

基本的なアプローチだと、

  • 斜角筋
  • 鎖骨下筋
  • 大胸筋
  • 三角筋前部線維
  • 小胸筋

これらのストレッチや滑走不全の改善がメインになってきます。
ですが、そのほかにも姿勢の学習なども行う必要がある場合が多いため、運動療法を用います。

運動療法は、全身運動になるので、姿勢をニュートラルに修正しながらの運動を行います。
主に脊柱の動きを引き出すような簡単な運動を紹介します。

スワンダイブ(修正)

  • うつ伏せ、両肩のやや上の床に手を置く
  • 両手のひらと恥骨、両膝と両足を床から離さない
  • 頭と胸を持ち上げ、背骨を一個ずつ起こす
  • 前方の壁に向かって、脳天を伸ばす
  • 順番に背骨を降ろして、うつ伏せへ

この時に呼吸は止めず、腰椎が伸展しすぎないように気をつけましょう!
5回から10回繰り返しです!

四つ這いエクササイズ(スイミング修正)

  • 四つ這い、肩と股関節の真下に手を膝を位置する
  • 対角線上に上肢と下肢を一直線に挙上する
  • 反対側も行う

呼吸を止めず、腰椎伸展に気をつけます!
セット数は状態に応じて増やしてOKです!

ロールアップ

  • 仰向け
  • 90°前方に手を挙上
  • 頭から順番に起き上がる
  • 長座位まで起こす
  • 腰椎から順番に仰向けへ(ロールダウンといいます)

背骨が上手く使えない、体幹の筋力が弱いと、足が浮いてしまったりしますので、無理に行わないようにしましょう。

また、単純な起き上がりだけだと腹直筋に強く作用し、円背を引き起こします。
そのため、体幹を回旋させながらのロールアップ やロールダウンも行うようにしましょう。

 

アプローチに関しては、簡単にできるもののみ挙げさせていただきました。
運動療法中に症状が増悪するようなら、臨機応変に変更しましょう。
是非お役立てください!

今日はここまで。
それでは!

参考文献

  1. 北村歳男、胸郭出口症候群におけるWright testの意義、日整会1994;68:S449.62:105-9.
  2. 片岡泰文、腕神経叢造影によるTOSのタイプ分類と手術成績について、肩関節1992:15:262-7.
  3. 片岡泰文、胸郭出口症候群の病態腕神経叢造影を用いて -.日整会誌 1994:68:357-66.
  4. 北村歳男,胸郭出口症候群の鑑別。関節外科 2016:35:30-5.
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佐川 修平

佐川 修平

整形分野で働く現役理学療法士。 カラダに対するキヅキを与えられるセラピストになるのが目標。ブログの他にも、一般向けにセミナーやイベントなどを通じて情報発信中。

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